S&P グローバル・マーケット・インテリジェンス

第3回 中国の減速と南アジア・ASEAN諸国の商機

更新日:2022年12月19日

https://www.spglobal.com/marketintelligence/en/mi/research-analysis/china-slowdown-vs-opportunities-for-south-asia-and-asean-count.html

China slowdown vs. opportunities for South Asia and ASEAN countries
中国の減速と南アジア・ASEAN諸国の商機

2022年11月07日 アグニェシュカ・マシエフスカ Katarzyna Skrzypek

S&P Global Market Intelligence, Global Trade Analytics Suiteによる中国本土の最新データによると、2022年6月と7月に輸出の前年比成長率がプラス傾向(それぞれ17.7%と17.8%の増加)であったが、 8月、9月ではそれぞれ7.0%と5.6%の増加となり、成長の著しい減速がみられました。輸入に関しては、2022年6月と7月にそれぞれ1.5%、2.5%と限定的ではあるがプラス成長した後、 8月と9月にはそれぞれ前年比-0.2%、-0.4%とマイナス成長に転じています。

外国人投資家達は、中国の厳しいCOVID規制とロックダウンに悩まされているため、事業運営のために代替手段を探す可能性が高まっています。

他方、中国本土と異なり、いち早く国境を開放し経済成長を促進させたASEANや南アジア経済圏の国々が、新たな拠点を探す事を余儀なくされる中、今注目されています。

ASEAN地域と南アジア諸国、特にベトナム、インドネシア、フィリピン、バングラデシュは中国本土の減速の最大の受益者と考えられており、友好的な政策、若く大規模な労働力、安定した貿易ルートや、経済の完全再開によるCOVID状況の安定化で投資家を引き付けています。

■インドネシア
インドネシアに関しては、石炭(全世界)とパーム油(主に欧州と北米)が2022年の実質的な輸出の伸びを牽引しました。インドネシアは世界最大のニッケル採掘国です。 現在、インドネシアのニッケル生産量のほとんどは、ステンレス鋼に使用される低純度タイプで、電気自動車用バッテリーの重要部品である高品質(クラス1) ニッケルの生産・輸出を目指し、政府と鉱業界はニッケル産業の変革に取り組んでいます。

■フィリピン
フィリピン経済は2022年第2四半期に失速しましたが、COVID状況の安定化、旅行条件の緩和、国境の開放により、観光分野の回復が期待されます。 また、政府も経済の全面的な再開を公約しており、国のさらなる回復を後押しすると考えられています。

さらに、米国政府はインド太平洋経済枠組み(IPEF)イニシアティブの下、フィリピンが(機器や電池の製造に使用される鉱物である)ニッケルの主要生産国の1つであることから、 同国の半導体およびニッケル分野を支援するために質の高い投資を行うことを確約しています。

下表に示すように米国はここ数ヶ月、フィリピンからの電子集積回路とマイクロアセンブリの輸入をすでに増やしており、 2022年8月に米国はフィリピンから約1億8,000万ドル分の電子集積回路とマイクロアセンブリを輸入致しました。

■ベトナム
中国から事業を移す企業の中には、ベトナムが最も有益な場所だと考えている企業も少なくありません。

2022年第3四半期では、ベトナムのCOVID状況の改善が追い風となり、製造業の生産が力強い回復を見せました。輸出は引き続き非常に好調で、以前よりもサプライチェーンの混乱に対する回復力を維持しています。

今年の米国のベトナムからの輸入の前年比伸び率は、2月を除いて毎月30%、あるいは40%(2022年6月は43.1%)前後で揺れ動いていました。
米国はベトナムにとって最大の輸出市場となっており、2021年には輸出額が1000億米ドルを超えると言われています。ベトナムの今後の可能性は、特に米国の投資家の間で関心を集めております。

GTAS Forecastingによると、2022年から2025年のベトナムの輸出の年平均成長率(CAGR)は4.2%に達すると予想されています。

■バングラディッシュ
バングラデシュは中国本土に次ぐ世界第2位のアパレル・服飾雑貨輸出国であり、主要貿易相手国との貿易額は増加傾向にあります。GTAS Forecastingでは、バングラデシュの総輸出は2022年に前年比9.3%増加すると予測しており、 この成長の多くは、アパレルおよび衣料品付属品(HS章コード61および62)の輸出が牽引しています。

2022年には480億米ドルに達すると推定されており、同国のアパレルおよび衣類付属品の輸出は、2021年に前年比25%近く増加し、2022年には12%増加すると予測されています。

バングラデシュ政府は外国からの投資を積極的に支援しており、経済的には大きな逆風が吹いているものの、戦略的立地や多くの労働力、活発な民間セクターを生かし、 外国投資家を惹きつけ、南アジア諸国の中で重要性を増していくと思われます。

中国本土が依然として世界の輸出大国であることは間違いありませんが、非常に厳しいCOVID政策や習近平氏の経済政策に由来する現在の制約は、 減速と海外投資家離れに大きく関わっており、長期的には世界の貿易パターンに影響を与える可能性があります。

この記事は2022年11月7日にS&P Global 所属の Agnieszka Maciejewska Economics Manager, Trade Forecast, S&P Global Market Intelligence 、及び Katarzyna Skrzypek Senior Economist II, Global Trade Forecasting, Maritime, Trade & Supply Chain, S&P Global Market Intelligenceより発表された記事を簡易和訳したものとなります。

詳しくは、S&P Global Market Intelligence, Maritime, Trade & Supply Chain,の営業担当水山(shinnosuke.miziuyama@ihsmarkit.com / 090-6236-0444)までお問い合わせください。

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