

大阪市から車を走らせること約1時間、そのゴルフ場の住所は大阪府泉南郡岬町深日とある。
深い日、とあるように、トンネルを越えるたび、日差しが明るく柔らかくなっていくことを感じることができる。
クラブハウスの玄関に到着すると、すぐそばに朝日できらきらと光る大阪湾が広がっている。縦に細長い日本列島、東向きで想像すると泉南郡より緯度が南なのは和歌山県だけである。
なんとも言えない暖かな柔らかな海の見える景色である。
ゴルフ場の名前は「大阪ゴルフクラブ」、愛称は淡輪(たんのわ)。「日本のシーサイドコースは東に川奈、西に淡輪あり」と、寺田甚吉(後の南海電鉄社主)の私有地と南海電鉄沿線だったこの場所に1937(昭和12)年、9ホールで始まる。
翌38年の18ホール拡張の時に名匠・上田治氏が設計を手掛ける。上田氏は京都大学在学中から廣野の設計に携わるなど、廣野や川奈(富士コース)を設計したC・Hアリソンの影響を受けている。こうして関西では8番目、大阪府では2番目に古いコースが誕生する。
コースの特徴は、なんと言っても今は少なくなった1グリーンの高麗芝。季節によって表情が変わるグリーンと83ものアリソンバンカーが配置されているグリーン周り、そして大阪湾からの海風とコースの難易度は高い。
全長は6402ヤードと決して長くなく、いわゆる池などのハザードもほとんどないが、重機がない時代に人の手により造られ自然の起状をそのまま生かしているコースに平らなところはほとんどない。
18ホールの、どのホールも特徴的で気が抜けないが、小気味良く回れるので風光明媚(めいび)な景色と相まって爽やかな気持ちでラウンドできる。
近年、インバウンド特需の恩恵を受けている関西だが、コースが関西国際空港から近いこともあり、国内からのお客さまに加えて外国人旅行客も来場されるという。国別では中国、アメリカ、シンガポール、韓国、ドイツと幅広い。
昨年9月の台風の後、倒木などの影響でホールロケーションが劇的に変わり、海の見えるホールはパノラマで海の見えるホールとなった。
天気が良ければ、遠くに淡路島が見える最高の景色を一望できる。
一年を通して温暖な気候のこの地に「西にもシーサイドコースを」と、人の手によって造られたゴルフコースが、さまざまな時代の出来事と共に少しずつ形を変えながら乗り越えてきた。
この地を包む明るく柔らかな日差しのような、名門でクラシックだが穏やかで丁寧な雰囲気、手作りの温かみを十分に感じられるコースである。(日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロ)
にしはら・かずえ 00(平成12)年同志社大文卒。ゴルフインストラクター、日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロA級。現在は主に京阪神を中心にアマチュアゴルファーを対象にレッスン活動を行う。
