海の見えるゴルフ場
日本海事新聞ニュース
2019/06/06(木)
海游人】海の見えるゴルフ場(2):西原一慧。久美浜カンツリークラブ、「無添加運営」で新鮮な感覚
コースは久美浜湾に面している

 海が見えるゴルフコースというのは、当たり前だが海に近いゴルフコースということになる。海に近いということは、列島の厚みを感じる地形の淵が自然とイメージ映像として浮かんでくる。
 今回訪問させていただいたゴルフコースは、京都府京丹後市の「久美浜カンツリークラブ」で、山陰国立公園の敷地内に造られているコースである。コースの内海として面している久美浜湾を東端に西は鳥取砂丘までの山陰海岸一帯は、科学的に重要かつ貴重な地質遺産を含む自然公園としてユネスコ(国連教育科学文化機関)から「世界ジオパーク」として2015年に認定されている(国内では全部で9カ所認定)。
 しかし、コースに関するこのような詳しい事前情報がなくても、プレーを進めていくうちに、いわゆるいつもの行き慣れたコースラウンドでの感覚とは少し違うことをすぐに感じる。
 国立公園内の絶景を一目で気に入った創業者、伊東彌壽夫氏がこの場所にゴルフコースをと一見ハードルの高そうなコース造りに着手。開場に向けたさまざまな条件も地元と息の合った連携でスムーズにクリアされ、あっという間に1973年に開場を迎えた。
 名門コースを含むさまざまなゴルフコースに行くたび、その時々に変化する経済の景況感をそこはかとなくどこかには感じるが、久美浜カンツリークラブに、それはほとんどない。むしろ感じるのは、変わらないということである。開場から何も変わらない、そして3つ目の元号を迎えたこれからも変わらないのだろうなと。
 いつものコースにはない新鮮な感覚は、コースを形作る地元久美浜の自然をプレーヤーがゴルフを通じてそのまま感じることができるよう、全く邪魔していない自然体で無添加なコース運営からくるものだった。
 およそ3000万年前に日本列島ができる過程として、大きく「日本がまだ大陸の一部だった時代」「大陸から分かれ、日本海ができる時代」「日本列島が出来てから現在までの時代」に分けられるという。想像しきれないほどの時間をかけられて繰り返されてきた地球の新陳代謝の跡が、この地の地形や地層として堆積されてきたように、開場以来、そこにある自然や地域との一体感をシンプルに積み重ねてきた、しなやかさを全身で感じることができるコースである。
 国内のあらゆるゴルフ事業がいよいよ岐路を迎えているのは周知の事実だが、久美浜カンツリークラブはずっと以前から、目的ではない手段としてのゴルフを声高ではないが提唱し具現している。
 コースの特徴としては、全長が6551ヤード、インコースは山側にアウトコースは内海に面している。風が強い日のことを「風がある」というが、ほぼ全ホールが海に面するアウトコースはまさにそこに常に「風が在る」状態のゴルフプレーを楽しめる。
 今回は桜の季節に回らせていただいたが、薄い青空に緑付いてきたコース、青緑の内海に淡いピンクの花びら、と春色のグラデーションがミルフィーユ状に堆積された地形の淵の上に広がっていると想像するだけで心に染み入る景色だった。強い寒風の季節はどんな色だろうと、次に巡ってくる冬を楽しみに待ちたい。
 (日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロ)
 にしはら・かずえ 00(平成12)年同志社大文卒。ゴルフインストラクター、日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロA級。現在は主に京阪神を中心にアマチュアゴルファーを対象にレッスン活動を行う。

西原一慧 氏

 

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