海の見えるゴルフ場
日本海事新聞ニュース
2019/08/02(金)
海游人】海の見えるゴルフ場(3):西原一慧。ネムゴルフクラブ、洗練されたコースで深い気付き
静かで豊潤な空気感の美しいコース

  ゴルフはスポーツの前にゲームであり、ゲームの前にコミュニケーションであるが、3つの意識の濃淡が人によりまるで違う。思いとスイングが一致していないのではと感じることは何とも歯がゆいことである。
 今回訪問させていただいたのは三重県志摩市にあるパブリックコース、「NEMU GOLF CLUB」(ネムゴルフクラブ)。コース内、12番ティーボックスからリアス式海岸で有名な英虞(あご)湾を見下ろすことができる。前身の「合歓の郷ゴルフクラブ」は会員制プライベートコースとして1989年に開場、2007年に現在の名称となる。15年には大幅なコース改造が行われ滞在型リゾートコースとしてリニューアルされた。
 コースを回らせていただいた日は雨が降ったりやんだりのお天気だったが、曇天の中、静まり返るコースに白く靄(もや)がかかる様は、まるで芝生が呼吸をしているようであった。美しいのはコースだけではない。充実した練習環境、伊勢志摩グルメを食することができるレストランを含むクラブハウス、グレードの高いホテルに加えてグランピング(豪華なキャンプ)まである宿泊施設など、滞在型リゾートとはいえ、パブリックコースとして考えれば十分過ぎるぐらいのホスピタリティーである。キャリアやハンディキャップにかかわらず、特にビギナーの人に、本格的リゾートゴルフコースにてカジュアルでリラックスしたプレーをと、洗練されたパブリックコースで迎えてくれる。ゴルフ旅行や合宿にぴったりなコースである。
 ゴルフはメンタルのスポーツとよく言われるが、そもそも自分で始動させるゴルフスイング自体がメンタル動作である。ゴルフというゲームが悩みやすく、重くなりやすいのは仕方がない。ゴルフスイングは完成度よりも再現性重視の面があるため、動きそのものよりなぜそう動いたかが肝心で、平常心がより重要になってくるゆえんである。
 このネムゴルフクラブは悩みがちなゴルファーたちの心を軽く、リフレッシュしてくれる。世界的パワースポットの静かで豊潤な空気感の中、美しいコースでじっくりとゴルフに向き合っていると自分の意識に集中し、結果を気にしてしまう日頃のスイングとは違ってくるだろう。
 学術的には諸説あるとされているが、中世まで天皇の代が替わるごとに必ず新しい斎王(斎宮)が選ばれていたという。古墳時代より以前、斎宮の起源とされる倭姫命(やまとひめのみこと)が各地を巡行し、大和の国から伊勢の地に皇室の祖とされる天照大神を鎮座させるべく神宮を創祀(そうし)した。スマホもナビもおそらく地図さえなかっただろう時代に、伊勢は倭姫命の心の地図のギフトともいえる。
 レッドオーシャンからブルーオーシャンに舵を切り直されたゴルフコース、まさに新しく広がる青い海で無心で漂っていると、大切なのは泳ぎ方ではなく、水に浮く事であると気付かせてくれる。「なぜゴルフをするのか?」という自問自答、自分にとって無理のないゴルフスイング、ひいてはゴルフそのものとの向き合い方を深められる、そんなコースである。
 (日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロ)
 にしはら・かずえ 00(平成12)年同志社大文卒。ゴルフインストラクター、日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロA級。現在は主に京阪神を中心にアマチュアゴルファーを対象にレッスン活動を行う。

西原一慧 氏

 

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