海の見えるゴルフ場
日本海事新聞ニュース
2019/12/23(月)
海游人】海の見えるゴルフ場(5):西原一慧。ウッドフレンズ名古屋港ゴルフ倶楽部、海からの風で向上、心の燃費
12番ロングホールのサード地点

 2000年代に本格登場したITは「モノからコトへ」という概念シフトを加速させ、結果スポーツもその恩恵を大きく受けた。同時に「燃費」という言葉もまた、新世紀に入ってさらに浸透したと個人的には考える。資源と環境に配慮された自動車として世界初の量産ハイブリッド車「プリウス」が発売されたのは1997年。当時はPRのため同年の京都での地球温暖化防止会議(COP3)に間に合わせて開発し、発表されたとも言われた。
 今回訪問させていただいたのは愛知県弥富市にある、「ウッドフレンズ名古屋港ゴルフ倶楽部」。00年開場、全長は6600ヤード、名古屋港管理組合が管理する埋め立て地に造られたパブリックコースである。アウトは林間コースにいるような不思議な雰囲気、インは伊勢湾を横目に毎ホールを進めていく。
 見た目より奥行きのあるコースで、傾斜のついた速く大きいグリーンに、日によって変わる緩急のある風と、さまざまな幅広い難易度で楽しめる。来春からは、新たに9ホールのナイター営業が始まる。愛知県を横断する伊勢湾岸道沿いには国内最大規模の名古屋港の夜景が広がるが、港湾施設の近くにある遊園地やテーマパークを眺めてプレーすることができる、街中のきれいなゴルフコースである。
 ゴルフをプレーするに当たって思考回路が混線しやすいのは、意識の上でのインプットとアウトプットのあんばいが難しいところにある。ここを情報収集の段階で認識しコントロールする必要があるが、練習の場数でハンディがあると思われる都市部に住む人たちはどうしているのかと勝手な心配をしている。
 勝手ついでに、このマイナスハンディを少しでも縮める方法の一つとして、風のラウンドに慣れることをお勧めしたい。風の中では感情たっぷりとはいかない。それどころかいつにも増して飲み込むばかりとなるが、自然によるさらなる負荷は、「難しさ」を「誰がしても難しい」へ変えるため、頭の中はシンプルになる。意識はボールより目標に、自分の感情より状況判断におのずと向いていく。
 この勝手な私案を風が吹くこちらのコースで勝手に当てはめてみる。ここはアウト・イン共に最終ホール、グリーンを狙うショットが池越えとなっているので1日の最初と最後のショット、この2打を比べる。これだけを考え、あとは考えすぎず、最初はヘトヘトだった風の中でのプレーの疲労感が少しずつ心地良くなってきたら、そのじんわりした感覚もまた、ゴルフなりのアウトプットであると言える。
 どこにエネルギーを費やすかを自分で決めることができるのはゴルフの魅力でもあるが、風はプレーヤーのタイプにかかわらず、その人自身の心の「燃費」を確実に上げていってくれるだろう。
 輸出が多い名古屋港、その半数以上は自動車関連のものだという。日本経済をけん引するこの産業は今、自動運転技術の到来で百年に一度の大変革時代を迎えているとのこと。次の新しいテクノロジーがゴルフ業界、特に街に住む人たちのゴルフ事情をどのように変えるのか、個人的にはこれまた勝手ながら非常に期待を寄せている。
 どのような環境のプレーヤーであっても屋外でのプレーを最大限に生かすべく、風から第4次産業まで自然と巻き起こる状況の変化を味方に付けて長く、ゴルフを楽しんでいってほしい。
 (日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロ)
 にしはら・かずえ 00(平成12)年同志社大文卒。ゴルフインストラクター、日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロA級。現在は主に関東圏を中心にアマチュアゴルファーを対象にレッスン活動を行う。

西原一慧 氏

 

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