海の見えるゴルフ場
日本海事新聞ニュース
2020/02/12(水)
海游人】西原一慧:海の見えるゴルフ場(6)。館山カントリークラブ、地道な努力が女性の共感呼ぶ
「一望千里」という名称を持つ東コース7番ホール

 消費の80%を握っているとも言われている「女性マーケティング」の今の時代、東京ディズニーランドは女性人気の代表格だが、高く長い人気の裏には企業努力のほか、夢の国を存分に楽しんでもらうための安定した気候も大きいと考えられる。
 今回訪問させていただいたのは千葉県館山市にある「館山カントリークラブ」。1967年開場、27ホールあるコースの全長は9700ヤード。広くフラットなコースで、とにかく暖かい。12月の小雨模様の日でも全然寒くない。聞くと、海からの風で夏は涼しく冬は温暖のため雪によるクローズはほとんどないという。
 海が見えるホールとして「一望千里」と名付けられたホールのティーボックスからはフラットなコース全体と太平洋が見事に並行しているのが分かり温かい気持ちになる。聞くと、こちらのコースでの撮影映像は昨年の大河ドラマやテレビCMなどで使われるほど。それに加え、日本一ディボット跡(ショットで芝が削れた跡)の少ないコースを目指して1日の終わりにコースの人たち全員で目土(めつち)作業をするなど、コースメンテナンスにも余念はない。
 昼食時、木の床のレストランに入るとほぼ、どのテーブルにも女性客がいる。食後にコーヒーをオーダーすると係の人から「コーヒーを入れるのに5分ほどかかりますがスタート時間は大丈夫ですか?」と言われて内心少し驚く。聞くと、レストランでの料理には活性水素水も使っていると、事もなげに教えてくれた。
 およそ10-15%という、これまで訪問させていただいたコースでの女性の来場者比率が、こちらでは20%というのもうなずける。コースの特徴でもある、元々の恵まれた気候や景色など、女性との相性の良さは随所に散りばめられているが、それらは細やかで丁寧に行き届いたサービスや営業努力で最大限生かされている。
 昨年、千葉県印西市で国内初となるPGA開催が行われ大きな話題となったが、毎年プロツアーが多く開催されている千葉県は兵庫県や北海道、九州地区などと並んでゴルフ先進県の感がある。細かいデータがあるわけではないが、トーナメント興行を自然とリードする形となる地域は、他府県と比べて女性の来場者数はやはり多いだろう。その上で、女性ゴルファーに関する情報共有はもっと広がってもいいのではと率直に考える。
 そもそも、ゴルフを始められる方の35%以上は女性とも言われている。しかし残念ながら実際の女性ゴルファーの総数はこの割合よりも下、だろう。なぜ女性はゴルフコースから足が遠のいてしまうのか。気候などの外的要因とは別の、ビギナーからゴルファーまでの間に、女性とゴルフを取り巻く本当の問題はあり、おそらくこれは日本だけではなく世界共通の課題だろう。
 「当たり前のことを当たり前に」という、こちらのコースの着実な運営や営業努力は決して拙速ではない、ゆったりとした時間感覚を思い起こさせ、それらが共感や理解、プロセスを特に重視すると言われる女性の感覚に訴求しているようにも感じられた。
    ◇
 今年は子(ね)年。コースにミッキーはいませんが、1人でも多くの女性ゴルファーが自然の中の非日常を心置きなく楽しめますよう。みなさま今年もどうぞよろしくお願いいたします。
 (日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロ)
 にしはら・かずえ 00(平成12)年同志社大文卒。ゴルフインストラクター、日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロA級。現在は主に関東圏を中心にアマチュアゴルファーを対象にレッスン活動を行う。

西原一慧 氏

 

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