海の見えるゴルフ場
日本海事新聞ニュース
2020/08/24(月)
海游人】海の見えるゴルフ場(9):西原一慧。淡路カントリー倶楽部、思考深める長いミドルホール
コースはやや高い所にあり、海を見下ろしながらプレーができる(写真は3番ホール)

 今夏に実施されている「GoToトラベルキャンペーン」を眺めていて考えたのは、人が旅をするのは「現実から離れてイベントを楽しみたい」のほかに、「時間とともに確実に変わっていくものにだけ目を向けたい」からではないだろうかということだ。
 「現実」を挟んで、人が情報とどうあるべきかは人にもよるが、それぞれのスタンスに対して他者が口を挟めるものではないということを如実に現した出来事だった。
 今回の訪問地は兵庫県淡路市にある「淡路カントリー倶楽部」。開場は1963年、全長は6700ヤード。淡路島の中では一番古く、県では12番目に古い。明石海峡大橋を渡り、インターチェンジを降りて緑が深い山道を上がっていく。コースは西浦に位置し、島の中でもやや高いところにある。冬は西から吹き下ろす風で体感気温はぐっと下がるという。
 開場から50年を超えているコース内の木は高く、ブラインドホールがあるなどティーショットはやや気を使う。きれいに刈り込まれている大きなグリーンを狙うショットの距離感が勝負どころだ。高い木が多くシンプルなレイアウト、整備されたコースに心が落ち着き、素朴で静かな雰囲気の中にあっという間に入っていける。
 来場者の内訳は島内外で6対4だという。
 淡路島といえば、豊富な食材で有名だ。レストランには明石港に毎日卸される海鮮食材、島で取れる牛肉や野菜をふんだんに使ったメニューが並び、淡路ビール(地ビール)もそろっている。どのテーブルの方もおいしそうに昼食を楽しまれていた。
 海が見えるのは3、8、15番ホール。最も海に近づく8番からは天気が良ければ瀬戸内海・播磨灘越しに小豆島も見えるそうだが、この日は靄(もや)がかかっていたため薄い景色だった。しかし、海はすぐそこにある。プレー後、クラブハウスから見えたサンセットの色は深く透き通っていた。
 こちらのコース、総距離は標準だが距離が長いミドルホールが多い。各ホールとも表示距離より長く感じられるのだが、幾つかのミドルは設定自体が長く、その分難易度が上がり面白くなる。
 短いロングと言われるとスコアが気になるが、長いミドルと言われると数よりも納得する形でホールアウトしたいと考えるプレーヤーは多いのではないだろうか。
 「現実」と「情報」の間で意識が変わることを改めて実感するが、思考と意識と身体感覚は深いところでつながっているのか、難しい状況はホール攻略に必要な集中力やひらめきを促してくれる。
 ハザードが多いわけではなくグリーンのアンジュレーション(起伏)がすごくあるわけでもない。自然の風や地形が生かされ、しっかりと距離があり、海の風景と相まったオールドファッションなコースの雰囲気の中、静かにゴルフと向き合えるコースである。
 毎年、若い人たちが島外へ出ていくことが懸念の一つとお聞きしたが、情報伝達が発達し、発信される情報が多様化する中、1周回った情報の究極の形は自分だけが体感的に持つ興味や経験に静かに向き合うことそのものだといずれ人は気付いていくだろう。
 (日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロ)
 にしはら・かずえ 00(平成12)年同志社大文卒。ゴルフインストラクター、日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロA級。

西原一慧 氏

 

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