エネルギーの安定輸送を目指して
目標歩数は一日20,000歩!!

< 第463回 > Sun Jul 01 16:47:00 JST 2018掲載


株式会社商船三井
エネルギー輸送営業本部長
取締役 専務執行役員
橋本 剛 氏


――エネルギー輸送営業本部のご紹介をお願いします。


 エネルギー輸送営業本部は発足して3年目の部門になります。発足前はタンカー、LNG、石炭の各部門がそれぞれに営業活動をして成果を上げていましたが、横の連携はあまり取れていませんでした。今後、海外での事業活動の拡大や、昨今の電力・ガスの自由化によりエネルギー産業に業種の垣根がなくなってきている現状に対応するためには、各部門の連携が必要になってきます。そうした背景からエネルギー輸送営業本部が生まれました。日本のマーケット以外にもBRICsのような大きなマーケットへも事業を展開していきます。これまでは、様々な国に定航部門の駐在員や現地法人が居ましたが、ONEができたことで定航のネットワークを今後は活用できなくなりました。今後は、より一層各部門の連携を密に取り、商船三井としての海外営業体制を構築していきたいと考えています。


――ご入社のきっかけ、海運業を選んだ理由をお聞かせください。


 大学では中国語と中国文学を専攻しておりまして、そのバックグラウンドを活かせる仕事は何かと考えたときに、貿易や輸送関連が良いかなと考え海運業が思い浮かびました。商船三井に入社後は、一番初めに配属された部署が定航中南米課、その後財務部を経てLNG部門に長くおりましたので、中国語を使う機会は残念ながら無く、すっかり忘れてしまいましたが、機会があればまた勉強したいと思っています。


――特に印象に残っている仕事はございますか?


 94年にそれまで約10年間所属していた財務部門からLNG部門へ異動になりました。ちょうどそこ頃カタールでのLNGプロジェクトの立ち上げ準備が本格的に始まった時期で、その担当者になりました。お客様のカタールガスにとっても私自身にとっても経験の無いLNGへの取り組みでしたので、一つ一つの作業がとても大変で苦労の連続で毎日が勉強でした。お国柄などいろいろな背景もありますが、契約項目の細かな確認事項が続き、そのたびに説明、交渉し納得してもらい「OK」の言葉を引き出すのはとても骨が折れる仕事でした。このプロジェクトでは合計11隻のLNG船が当社を含む日本コンソーシアムにより順次投入されていったのですが、コンソーシアムの幹事会社である当社の担当として、96年末の第1船目から最後の11隻目が投入される2001年まで足掛け5年に渡り見守ることができました。当時このプロジェクトは規模も大きく世界のLNG事業にとってとても大きな影響を与える画期的なものでしたので、カタールLNGプロジェクトの立ち上げに携われたことはとても貴重なことだったと思っています。LNG部門の仕事は大変だとよく言われますが、若い時期にカタール相手にたくさんの苦労を経験したので、その後、難しい状況に遭遇してもあまり驚かなくなりました。


――これまでにあった最大のピンチや失敗談はございますか?


 84年~94年まで約10年間、財務部に在籍していたのですが当時の日本はバブル経済に沸いていました。一方、海運業界は円高不況に陥った時期でした。不況時の業績下支えをするために各社とも財務部門ではいわゆる「財テク」に注力していた頃でした。株式や債券、投資顧問を使っての資金運用など様々行っておりました。それまで好調だった証券市場が90年代初頭にバブル崩壊し、会社としても大きな損失を出すことになったのですが、その時がとにかく苦しかったです。さっさと手じまいして比較的傷が浅いうちに損失を確定させておけば良かったのに、様子見で損失を拡大させてしまった後悔、自己嫌悪が残りました。しかし今になって振り返ってみると、あれほどの大きな金額を扱いマーケットを肌で感じることができるのは財務部の仕事の醍醐味です。当時の経験から学んだことは、やると決めたら思い切ってやる、ダメだと思ったらすぐに手じまいすることの大切さです。自分の思考プロセスと行動をしっかり一致させることが大切です。緻密なデータ分析をした上で、理論的・機械的に行動が出来れば大失敗を引き起こすことは滅多に無いと信じています。


――ご趣味と休日の過ごし方についてお聞かせください。


 出張が多いので体調管理に気を付けています。初めは出張先のホテルのジムで走る程度だったのですが、だんだんと出張がなくても走るようになり、今では朝に30分ほどジョギングをしてから出勤しています。朝はすがすがしく気持ちがいいですし、ストレス解消にもなります。2年ほど前からはジョギングに加え、日中や夜になるべく歩くようにしています。時間がある時は、会社から自宅までの約6キロの道のりを1時間少しかけて歩いて帰っています。ゴルフ場でもカートに乗らずに歩きます。1日20,000歩が目標です。GARMINのウェアラブルデバイスのデータをスマホで管理しています。実際にデータとして数字で見ると励みになるし面白いですよ。


――座右の銘は何ですか?


 自分で考え、判断して行動するようにしているので「座右の銘はこれ!」というのは特にないです。考える時は、悩むというよりも問題解決を探す過程を楽しもうと、ポジティブに捉えるようにしています。またただの問題解決の方法だけを考えてもつまらないので、どうしたらみんなが「あっ!」と驚くか、みんなが思いつかないような方法は何か無いかなと考えてはワクワクしています。自宅までの帰り道に歩きながらあれやこれやと考えると、いいアイディアが浮かぶことがあります。実際にみんなを驚かせることができるかどうかは別ですが(笑)


――夢や目標についてお聞かせください。


 これまで出張でたくさんの土地を訪れましたが、実は観光をあまりしたことがないのです。必要最低限の時間で効率よく仕事することを優先していたら、気が付いたら有名な観光地ですらほとんど行ったことがないので、今後はぜひプライベートで妻と一緒にゆっくり巡ってみたいなと思っています。特にヨーロッパの田舎町や保養地、運河や河川などをゆっくり観光できたらと思っています。国内では特に東北・北陸地方を観光したいです。食べ物も楽しみですね。


――海運業に携わる若い世代へ向けてメッセージをお願いします。


 世界経済や情勢は目まぐるしいスピードで動いています。一方で船の世界は長期投資なので現在の世の中の流れをつかみつつ、将来を予測することが必要です。シナリオ通りにいかないことのほうが多いでしょう。地道な仕事が多く、そんなに華やかではありません。しかし海運・物流を通して地域や産業に貢献する新たな価値を創造し、人々の生活に大きな影響を与え得る仕事です。提供する海運サービスの水準が下がれば、地域の物流が滞り経済にも悪影響を与えます。逆に私たちのサービスが安定的で高水準であれば、その分生活はもっともっと潤うでしょう。地域経済の発展の一端を担えることに感謝しつつ、自分が今携わっている仕事の価値をしっかりと感じ、社会へ貢献しているという自負を忘れずにこれからの海運業を支えそして活躍していただきたいと思っています。


――橋本専務の思い出に残っているお料理・お店などがございましたらエピソードをお聞かせください。


 スペインのマドリードで訪れた「BOTIN(ボティン)」というレストランです。ヘミングウェイの「日はまた昇る」の最後の部分で登場し、彼が「世界で最高のレストランの一つ」と紹介している場所です。お料理はどれもおいしかったのですがビジネスランチだった事もあって食事だけには集中出来ず、「なぜ世界一なのだろう?」という疑問が残ってしまったので、ぜひもう一度行ってゆっくり食事を楽しみ、彼がそこまで愛した理由を探りたいと思っています。



【プロフィール】

(はしもと・たけし)

1957年10月生まれ
1982年 3月 京都大学文学部卒業
1982年 4月 大阪商船三井船舶株式会社入社
2009年 6月 執行役員 LNG船部長
2016年 4月 取締役 専務執行役員

■株式会社商船三井 (http://www.mol.co.jp/


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