三井住友信託銀行 本店営業第二部第二課 課長 小野 隆太郎 氏 主任調査役 佐藤 智幸 氏 調査役 別宮 直樹 氏 調査役 狩野 健太 氏 主任 松本 拓也 氏 主務 西田 将也 氏 主務 小川 遥一郎 氏 主務 川上 菜々子 氏
――三井住友信託銀行 本店営業第二部第二課のご紹介、強みについてお聞かせください。
小野 第二部は全部で3つの課があり、第一課がリース・ノンバンク・証券を、第三課が総合商社を担当しています。第二課は海運・船舶を担当しており、課長の私の他、営業担当が6名、ミドル・融資事務担当が4名、総勢11名の体制です。他行と異なる第二課ならではの強みとしては、シップファイナンスならどんなものでも取り扱っている点です。地方銀行では地場の船主向けがメインですし、メガバンクは邦船オペレーター向け融資が多かったり組織が分かれたりしていますが、第二課では邦船オペレーター向け、地方船主向け、JOL、商社とのJV案件などのほか、海外船社向けのダイレクトファイナンスやファンド向けの融資など、ありとあらゆる船舶ファイナンスに取り組んでいます。第二課の予算を預かる課長の立場では、様々な分野を手掛けていることで、案件が限られる時に別の案件に重点を置いて予算を配分できるメリットがあります。船舶一本の単品商売ではあるものの、お客様の属性が多様化しており、それぞれに満遍なく取り組むことができる営業体制になっています。例えば、邦船社が船主起用ではなくJOLCOにシフトしているとリース会社への営業も可能で、予算をそちらで確保するなど、営業戦略を柔軟に策定できる強みがあります。
――みなさんのご経歴についてお伺いします。
小野 2008年から2012年まで高松支店で四国船主を担当した後、営業部の第二課には2012年から8年半ほどおり、船舶融資を担当して12年が経ちます。
佐藤 2002年に入社し、2006年から2年ほど大阪支店で船主向け融資を担当した後、2008年に旧行の住友信託銀行の東京営業第二部(現在の本店営業第二部)に配属になり8年間海運会社を担当させて頂いて、2016年にシンガポール支店に赴任しました。シンガポール支店では後半の1年半、非日系海運会社の新規開拓を担当し、2019年9月、ありがたいことに現職に戻って来ました。
――お二人とも、シップファイナンスの重鎮ですね。
小野 2年ほど前までは課内に船舶融資を担当して5年を超える者も多かったのですが、人事異動が続き、現在のメンバーでは経験の長短が様々な顔ぶれです。
――船主は家業として命がけで取り組んでおり、また船会社も同様、業界のプロです。お客様にとっては銀行担当者が阿吽の呼吸が通じるような存在であるだけで、安心感が全く違いますね。若手の方々も頼れる先輩が後ろにいると心強いと思います。小野課長、佐藤さんに続き、みなさんもこれまでのご経歴についてお聞かせください。
別宮 2009年に入社し、最初の4年間は大阪支店でホテルやメーカーといった中小企業向け融資営業を行っていました。その後は信託部門を希望し、4年半ほど金融機関の住宅ローン・自動車ローンを証券化するアレンジ業務を担当しました。続いて、異なる分野で引き続きアセットを使ったビジネスを、と希望し現職に就いて3年が経ちました。
狩野 2010年に入社しまして、4年強、東京で中小企業の法人営業を担当していました。その後、ニューヨーク支店に赴任し、4年8カ月の間、日系企業の営業と弊社の資金調達(CPCDの販売)を担当していました。2019年4月から第二課で船舶ファイナンスに携わっています。
松本 2013年に常陽銀行に入社し、2年半前に転職して来ました。元々は別の部署で法人営業をしていましたが、2020年9月に第二課に異動になり、4カ月になります。もっと大きな仕事をしたいという思いで転職してきたので、第二課に配属になりある意味、願いが叶った思いです。船舶融資の契約書は、これまでの銀行マン人生で見て来た契約書をすでに超えたのではないかというくらいの枚数があり、改めてその特殊性を感じています。
西田 2016年に入社し、社会人5年目です。最初の2年半ほど、本店営業第十三部という法人営業の部署で新潟や群馬の顧客を担当していました。その後の1年間、ニューヨーク支店でトレーニーとして経験を積んだのち、2019年12月に帰国し第二課への配属になりました。
――川上さんは入社以来、第二課にご勤務とのことで、川上さんから見た第二課についてお聞かせください。
川上 とってもアットホームな雰囲気です。他部署では営業と事務が分かれてしまっているところもあるように感じますが、第二課ではお客様に対するサービス向上の精神から、皆で密なコミュニケーションを大切にしていると感じます。
――続けて、シップファイナンスならではの特色や第二課の強みと感じていることについて、まず若手の西田さんと松本さんにお聞きしたいと思います。
西田 本店営業第十三部で法人営業をしていた当時、新規取引の場合は、まず1年間お付き合いしてみましょうといったものでしたが、第二課では新規のお客様でもいきなり10年、15年の期間、お貸しすることになるという大きな違いがあり、長期のお付き合いを念頭において取り組む難しさを実感しました。今まで貸し出した金額全部を足し合わせたくらいの額を船1隻の案件1件でお貸しすることになったりします。もちろん金額の大小のみでは表せませんが、少なくとも社内の整理の仕方などは当然、複雑になるので、案件規模が大きくなることで取り組み方が違ってくることを感じています。
――お客様の与信を見ていくのに加え、アセットである船そのものの担保価値にも注目する必要がありますし、こういった点が船舶融資の大きな特色になりますね。
西田 船価評価については主に専門の部署から情報を取得していますが、企業の業績や船の価値を併せて長期的な視点で見ていくというのは以前在籍した部署にはない観点であり、新しい価値観を学べていると感じます。
――銀行にとってもお客様にとっても良い案件かどうかという、目利きですね。
――船というアセットは大変高額で長期間にわたるものでもある反面、お客様である船主とのお付き合い自体は「人対人」の業界ですが、別宮さんはどのように感じていらっしゃいますか。
別宮 正直、最初は面食らいました。私は中国、九州地方の船主も担当しているのですが、オフィスではなくお客様のお宅に直接訪問しますし、お酒が好きなお客様とは、お酒を通じて距離が近付いたところでいきなり案件の相談が始まることもあります。お付き合い次第で次の関係づくりが決まってくるピリピリした感じには最初の1年ほど戸惑ったのが正直なところです。それが、最近では徐々に自分の理解が広がるにつれてやりがいを感じるようになってきました。
――法人営業でありながら、お客様との距離の近さは独特なものがありますね。別宮さん、狩野さんにも第二課の特色についてお伺いします。
別宮 第二課の融資業務に携わっていて興味深いのは、商社やオペレーターとも取引があるのでバリューチェーンの上流の部分について把握しており、次にブローカーを挟んで船主がいて、時には下流(ユーザー)の荷主の部分までもといったように、融資している船舶をめぐり、お金という観点から一連の流れが見えて来ることです。
狩野 金融機関の融資では貸したお金がどういうものにつながるのか見えにくいですが、船舶融資ではお金がどう活用されるのか具体的に実感できますし、広く言うとそのお金が日本の国力を支える事業に費やされている点にやりがいを感じています。また三井住友信託銀行の看板の下で営業しているのはもちろんではありますが、他のプロダクトに比べるとそれぞれの営業担当の個性が案件につながっていく面白さも感じています。
――そうですね、みなさん個性が豊かですね。それでは三井住友信託銀行の個性とは何でしょうか。
佐藤 フロント、ミドル、審査部、調査部などそれぞれ、海運に携わっているメンバーは皆、船やシップファイナンスが好きだとか、自分は船について一家言を持っているという人間が多い印象です。それが故かわからないですが、オペレーターや船主、ブローカーに商社の船舶部の方々といった、お取引しているお客様方から好かれるというか、お互いに大事にしてもらえる関係を築けていると感じます。自分の場合には大阪で海運担当を始めた当時、海運担当が一人だけだったので誰からも教えてもらえず、過去の稟議書や契約書を見て勉強していたのですが、船主さんにとっては右も左もわからない新人はよくある話なので、とてもあたたかく丁寧に教えていただきました。おかげさまで勉強させていただき非常に感謝していますし、だからこそお返ししたいという思いもあります。若手の面々もおそらく皆、似たような経験があると思いますし、感謝の気持ちをもっているからこそお客様と良い関係づくりができているのではないかと感じています。
――みなさん、海事業界や船舶の案件全体について面白いと感じて取り組んでいらっしゃるのですね。船主やオペレーターもそういう人達にこそ支えてもらいたいと望んでいると思いますし、お客様に受け入れられ、愛されるゆえんですね。
小野 そういう意味では我々は「船愛」にあふれています。
佐藤 お客様から電話がかかってくると、つい若いのとれよ、という雰囲気にもなりがちですが、小野は率先して電話に出て、しかも相手がお客様だと、営業担当に取り次ぐ前のトークが長くて、声のトーンで何か案件の話をしていて楽しそうだな、といった様子で船愛が伝わってきます。
小野 課長になるとなかなか一人で訪問する機会も少なくなり、またコロナのせいでお客様との接点が減っているので、意識的に電話をとりお客様と会話してから担当につなぐようにしています。
――小野課長、真面目ですね(笑)。
――コロナ下、みなさんで飲みに行くのは難しいと思いますが、コロナ前は課内でよく飲みに行かれていたのでしょうか。
西田 異動したばかりの当時は本当に飲み会が多くて、なぜこんなにというくらいの回数、行っていました。私は他案件もありまして(笑)、何回かさぼっていますが。
小野 川上は大学のテニスサークル時代からの飲ませ上手で、第二課に来た新入りはまずは彼女の横に座らせて、お客様との接待に出せるかどうか「菜々子検定」を受けるのが必須です。川上は自分が1杯飲む間に10杯飲ませます。
――ご自身では余り飲まないのに飲ませるのが得意とは、某国内船主のようですね(笑)。どのようにすすめるのですか。
川上 「おかわりしたいんじゃない?」など色々あります(笑)。皆さんとても強いので、楽しいです。
佐藤 そういう意味では皆、仲が良いですよね。
小野 業務の性質上、担当割りが難しいこともあり、忙しい時は進んで誰かがサポートするという風土を残していきたいと思っています。
――多様な案件に取り組んでいる分、ノウハウを共有して助け合うためにも仲の良さが生きているのですね。
――続いて、お酒以外で(笑)、趣味や休日の過ごし方についてお聞かせください。
松本 専らサッカーをしています。先日の土曜は横殴りの暴風雨にもかかわらず、朝の6時から土砂降りの中、水遊びしていました。
狩野 月並みですが、週末は子守りと、それから都内のホテルステイです。家族がコロナで家にこもる時間が長くなりストレスが溜まると言うので、ホテルで美味しいごはんを食べたりのんびり過ごしたりしています。GO TOトラベルキャンペーンもありますので、普段はなかなか泊まれないような比較的高級なホテルを物色しています。
――座右の銘についてお聞かせください。
小野 「酒の一滴、血の一滴」です。第二課の名言であり標語です。
佐藤 「お酒は尊い」ということで、残さずしっかり飲み切りましょう、という意味です。
狩野 転じて、仕事は何事も最後までやり通すという意味です。
――思い出に残っている「一皿」についてお聞かせください。お酒でも結構です。
小野 お酒で言うと、毎年年末、オペレーター各社に一升瓶を差し入れがてら商事納めのご挨拶に出向きます。パレスホテルの地下の酒屋さんで、各担当がどの銘柄を持っていくか決めるプロセスが毎年とても楽しいです。ジャケ買いではないですが、「フェニックス」や「鳳凰美田」といった縁起が良いものや、我々の思いを込めたお酒を持っていきます。お邪魔した先で持参したお酒をいただくこともあり、私は全部で4、5社回るので、終わる頃にはべろべろになっています。
――お酒に始まりお酒で終わり、心に残る「絶景」についてはいかがでしょうか。
西田 絶景と言うか、記憶に残っている景色ですが、第二課に異動になって2週間ほど経った頃のことです。神田駅でお酒を飲んだ帰り、自宅のある神奈川県方面に向かって田園都市線に乗り、ほどなくして睡魔に襲われたようで、電車の中でぱっと目が覚めました。路線図では田園都市線は緑色で書かれているのですが、見覚えのないオレンジ色が目に入り、まさかと思い慌てて下りてみると、東武線で埼玉県の北春日部駅まで来ていたのです。夜中の1時半だったのでそのまま泊まり朝6時に起きて、8時からの会議に3分遅刻してしまいました。あの夜、目が覚めるや否や視界に入って来た「オレンジ色」は忘れられない景色です。
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