海事法役に立つ はなし

安全港の問題を考える -鹿島港・東京湾は安全だったのか?- (3/3)

更新日:2014年3月

東日本大震災と安全港の問題

 

船主は、傭船者から指定された港が安全でないことが判明した場合、傭船者の指示を拒否することができる。それでは、震災の当時、東京湾に航行することを指示された船主は、傭船者の指示を拒否できたか?
私自身は、鹿島港の英国判決なども考慮すれば、原発事故直後の東京湾は放射能汚染から防御すべき安全システムが構築されておらず、東京湾には現実の危険が存在しており、当時、安全港ではなかったと考えざるを得ないと思っている。


3月12日の午後3時すぎ、1号機の水素爆発が起きてしまった。この爆発によって原発内もひどく放射能に汚染され、復旧作業が難しくなった。その後、3号機、2号機と相次いで炉心溶融が起き、3、4号機の建屋も爆発するという負のドミノが起きた。当時、福島の第1原発では、1、3号機で水素爆発が続き、2号機で格納容器の圧力が高まり大爆発の危機が迫っていると思われていた。当時の首相の言葉を信用すれば、この当時、東電が撤退を申し出たようである。


最悪シナリオは、1~3号機のいずれかでさらに水素爆発が起き原発内の放射線量が上昇、余震も続いて冷却作業が長期間できなくなり、4号機プールの核燃料が全て溶融した場合であり、この場合の当時の政府が作成した最悪のシナリオでは、東京都のほぼ全域や横浜市まで含めた同250キロの範囲が、避難が必要な程度に汚染されると推定されていたようである。かかる最悪のシナリオは、当時現実の危険として考えられており、それを防ぐための安全なシステムはなかった。要するに、政府も国民も運を天に任せるしかなかった。

 

鹿島港が長波と北風で過去の歴史にはなかった危険な状態になる可能性よりも、この当時の原発の大爆発

による東京湾の危険性は遥かに大きかったと考えざるを得ないと思う。


当時、米軍が極めて広範囲にわたって避難区域を設けていた事実、欧州の航空会社が成田空港への運航を取りやめていた事実からしても、原発事故の発生した直後の東京湾は安全港ではなかったという当時のアドバイスは間違っていなかったと信じている。

聞くところによると、多くの荷主や傭船者は、この点に理解を示し、揚げ地を名古屋にするなどして、臨機応変

に問題(危機)を解決したようである。

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