伯方地区海運協同組合
西部 恵子 氏
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――2009年にJA全農えひめの
*みかん大使
を務められていた西部さんです。当時の活動について教えてください。
早生みかんの出荷スタートとなる11月上旬の一週間ほど、東京などの青果市場を回ったほか、みかんの配布や販促活動が一大キャンペーンです。次にいよかんのシーズンに入ると、東京をメインに大阪や京都、神戸、3月には雪まつりの行われる札幌を回りました。また松山空港では月に一度、ポンジュースが出る蛇口を設置して利用客に無料でふるまうイベントがあり、交代でPRに参加したり、地元の道後温泉でみかんの配布イベントを行ったりしていました。現在、ポンジュース蛇口のイベントは不定期開催で、まさに都市伝説となっています。――みかんシーズンは大忙しだったのですね。みかん大使時代の思い出に残るエピソードについてお聞かせください。
札幌の雪まつりでみかんを配らせてもらった時、あいにくの大雪だったにもかかわらず、大勢の方に来ていただき、大行列ができていたのにはびっくりしました。事前にイベントの告知はしていたと思いますが、毎年の催しを楽しみにしてたくさんの方が大雪の中で待っていてくれて、とても感動しました。 また4月14日の「オレンジデー」には、巨人軍のチームカラーのオレンジ色にちなみ、東京ドームでの巨人対阪神戦でみかんを配るイベントがあり、ドーム内がオレンジ一色になって圧巻でした。――「オレンジデー」??どのような由来でしょうか。
2月14日のバレンタインデー、3月14日のホワイトデーと愛情や絆を深める日が続き、次の4月14日にはその愛をさらに深め確かなものにし、柑橘類やオレンジ色のプレゼントを贈り合う日とされている愛媛発祥の記念日です。――みかん大使の活動はメディアでも紹介されるなど、注目を浴びるポジションだと思いますが、人前に立つのは得意な方だったのですか。
元々は緊張しやすいタイプだったので得意というわけではなかったのですが、人とふれ合ったり話したりするのは好きなので、みかん配布のイベントは楽しんでやらせてもらっていました。――これまでのご経歴についてお聞かせください。
新卒でJA全農えひめ傘下のJAおちいまばり(越智今治農業協同組合、立花地域を除く今治市全域と上島町が事業エリア)に入組しました。1年目は金融部門に配属になって窓口業務を担当し、その頃にみかん大使を務めさせていただきました。2、3年目は営農部門で柑橘類の販売や宣伝業務に当たり、関東の市場を回ったほか、インターネット販売の担当もしていました。2012年に退職し、伯方地区海運協同組合に勤め、現在に至ります。――ご出身は伯方島でいらっしゃるそうですが、やはり島で働きたいというお気持ちがあったのでしょうか。
特にこだわりがあったわけではなく、タイミング良くこちらに入社することができたような状況です。家業はみかん農家で、どちらかと言うと海運業界は馴染みが無いものでした。島で育ち、幼い頃から船が海を通っていく風景自体はよく目にしていましたし、小学校でも海をテーマにした絵画コンクールがあり、造船所に行って絵を描いたり、漁船の見える風景を描いたりすることもあったのですが、授業の一環という感覚で、自分にとっては船の業界は別世界でした。ただただスケールが大きいというイメージでした。――そんな中、海運業界に入って見て、実際にはどう感じましたか。
前職の陸の世界と比べると、船員さんの世界は入退社の入れ替わりが多い印象を持ちました。――農業では土地に根を張って取り組みますし、どちらも古くからある産業ではありながら、両者、だいぶ異なりますね。
――伯方地区海運協同組合のご紹介をお願いいたします。
まず内航海運の総元締めとして内航総連(日本内航海運組合総連合会)があり、傘下に5組合があります。そのうち、内航貨物船の船主系の全内船(全日本内航船主海運組合)と内タン(全国内航タンカー海運組合)の2組合系の愛媛県内の支部があるのですが、その下部団体として、伯方地区の内航船主と上部組織をつなぐ役割を担っています。当組合の組合員数は全部で52社、89隻です。――やはり伯方地区だけに組合員数が多いですね。
1997年の時点では105社、152隻を数えていましたので、これでも半分以下に減ってしまっています。船種や航路は様々で、当組合では油送船が40隻程度と一番多いです。航路としては瀬戸内海近辺が多いですが、北海道や沖縄まで行く船もあります。船員の出身地も全国各地にわたっていますが、伯方島の出身者もいますし、東北地方や九州出身も多い印象です。――伯方地区海運協同組合下での船員の方々はどのくらいでしょうか。
当組合で担当しているのは700名程度です。目下、一番の問題は船員不足で、小規模の船主では家族総出で船に乗っている場合もあります。伯方島の船主の中には、船員育成のために地元の高校出身者を船に乗せているところもあります。各社、船員確保の面では苦労しています。――若い世代に向けて、業界全体で船乗りならではの魅力ややりがいを一層、アピールしていきたいものですね。組合の業務内容について教えてください。
内航船主が船を建造するに当たり、暫定措置事業下では内航総連に建造申請を出す必要があり、また内航海運業法で定められている通り、各地方の運輸局にも申請を行うこととなっており、当組合ではそうした手続きを行っています。 また、私が担当しているのは船員向けの社会保険である船員保険の各種手続きの代行業務です。船員は陸上で暮らす私たちと違って船内での生活が主となり、保証内容が陸上よりも優遇されています。その分保険料も高額ではありますが、例えば乗船中の職務外のけがや病気について、下船後3カ月、医療費の自己負担が免除されるなど特殊な部分があり、各種手続きの代行業務を通じて、船員の日々の暮らしを見えないところでサポートしています。――話題を変えまして、ご趣味や休日の過ごし方についてお聞かせください。
高校、大学が松山だったので、松山に出かけることが多いです。車で1時間半くらいで着きます。お菓子作りが好きなので、土曜に家でお菓子を作って日曜に友人や甥姪に会いに行ってみんなで食べることもあります。料理も好きです。――お料理はどんなジャンルが得意ですか。
海鮮だとお刺身や漬け丼にカルパッチョなど、新鮮さや素材を生かしたシンプルなものが好みです。――ぜいたくですね。海の幸と並んで瀬戸内の恵みである、西部さんイチ押しの
*柑橘類
についてもご紹介をお願いします。
JAおちいまばりがブランド商品として販売している「瀬戸のはれひめ」は甘くて美味しいです。贈答用で喜ばれるのはトロンととろける食感の「紅まどんな」や年を越してから出回る「甘平(かんぺい)」です。春頃に旬となる「清美タンゴール」は、多くの新品種の親になっている品種なのですが、果汁が多くてジュースにしてもおいしいです。――色々あるのですね。
――続いて、欠かせない美容・健康法についてお聞かせください。
寝る前にストレッチやヨガをするようにしています。睡眠をよくとるように心がけ、水をたくさん飲むことです。柑橘シーズンになると、毎日のように旬の柑橘を食べています。――シンプルなことこそ、おろそかにできませんね。続けて、知る人ぞ知る、伯方島の素晴らしさについて教えてください。
*多島美
、眺め、自然、です。*船折瀬戸
という伯方島と鵜島の間の狭い海峡部では、潮がまるで川のように流れて渦を巻いていて、とても迫力があります。その名の通り、船が折れたといういわれのあるほどで、大島からは潮流を間近で体験できる船も出ています。 また、母がグリーン・ツーリズムの農作業体験交流の一環として、野菜の収穫とピザづくり体験の受け入れを行っています。畑のど真ん中に作った石窯を使って、旬の地野菜をトッピングした焼きたてピザを味わってもらうというもので、修学旅行生や体験者に好評です。――心に残る「絶景」についてお聞かせください。
伯方島に*開山
(ひらきやま)という標高149メートルの山があり、頂上から360度、瀬戸内の島々を眺め渡すことができます。桜の名所として知られ、桜の季節になると約1000本の桜が咲き誇り、辺り一面ピンク色に染まる景色は、息を呑むような絶景です。目の前の海の向こう、隣りの島々の山もピンク色に染まります。開山からは大島や大三島、岩城島、生口島に、天気が良ければ呉や三原など、広島の方まで見渡すことができます。――思い出に残っている「一皿」について教えてください。
小さい頃、母が誕生日に焼いてくれたスフレチーズケーキです。手作りなのでとても大きくて、アプリコットジャムを表面にたっぷり塗ってたくさん食べていました。思い出深い味で、レシピを受け継いで自分でも焼いているくらいに大好きなケーキです。
【プロフィール】(にしべ けいこ)
1986年生まれ 愛媛県出身
2009年 愛媛大学農学部卒業、越智今治農業協同組合入組、同年、みかん大使として活動
2013年より現職
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