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【まりたん 第14回】
2024ミス日本「海の日」は 大好きな宇宙工学の研究に打ち込む
有馬 佳奈さんのインタビューです
< 第548回>2024年07月08日掲載 


2024ミス日本「海の日」
有馬 佳奈 氏
















――ミス日本への応募のきっかけについて教えてください。

 高校生の時に、『ガールズカンファレンス』という、女性や女児の社会的、経済的エンパワーメント実現のためのディスカッションの大会に参加し、最優秀賞を受賞したことをきっかけに、女性の社会的地位向上に興味を持ち始めました。
 私が所属しているのは工学部の航空宇宙工学科という、女性の少ない分野です。私のように女性でも工学の分野で挑戦している人がいると伝えることで、女性だからという理由で夢を諦めようとしている人、或いはそもそも工学の分野に行こうという発想がない人、そういう人たちに少しでも勇気を与えることができたらと思いました。
 もう一つの理由としては、現在私は研究職を目指していますが、これから社会に出ていくという大事な時期に、ずっと勉強をしているだけでいいのだろうかという思いがありました。ミス日本コンテストの存在を知り、ファイナリストは約30もの貴重な講義を受けられるということにも惹かれて応募しました。



――特に印象に残っている講義についてお聞かせいただけますでしょうか。

 JAMSTEC(海洋研究開発機構)の女性の方の講義です。
 研究職という女性が少ない分野で活躍している方のお話が聞けるということで、受講前から楽しみにしていました。一番印象的だったお話は「日本は排他的経済水域の体積が世界第4位だから、深海に対して責任を持たなければいけない」ということです。私もこれから研究職を目指す立場ですが、自分の研究に対して責任を持つという考えがなかったので、とても感銘を受けました。



――JAMSTECの方の講義が印象的だったということですが、もともと海への興味関心はありましたか。

 私は鹿児島県南さつま市という、日本三大砂丘の一つである吹上浜(ふきあげはま)がある地域の出身で、子供の頃から海は身近な存在でした。特に深海は未知の領域でもあるので、宇宙と同じくとても興味があります。飛行機やロケット、深海など私は「かっこいい!」と感じるものが好きです。


――鹿児島県出身なのですね。吹上浜とはどういう場所ですか。

 吹上浜※は鹿児島県の西岸にある砂丘です。そこでは毎年『砂の祭典』という、鹿児島県民なら誰でも知っている大規模なイベントが開催されています。吹上浜の砂を使って作られた砂像の作品を見ることができ、夜には砂像のライトアップや花火も楽しむことができます。近年では街の中にも砂像が展示されるので、街の魅力も最大限に活かしたイベントになっています。
 実はミス日本「海の日」の表敬訪問で南さつま市を訪れた際、市長さんにお声がけいただき、砂の祭典で司会をさせていただきました。

※吹上浜:日本三大砂丘の一つで、北はいちき串木野市から日置市、南さつま市まで47km続く日本一長い砂丘。東シナ海に面し、南さつま市の海岸線の北半分は吹上浜になっています。<南さつま市観光協会HPより>




――海は幼い頃から身近にあったのですね。船に興味を持ったことはありますか。

 私が今研究しているのは「リブレット構造」というものですが、これはサメの肌からヒントを得て作られた構造です。過去にアメリカのヨットレースで使われたそうですが、あまりにもスピードが速すぎてその後使用禁止になったほど有効だったようです。
 私の研究はサメがルーツなので、宇宙の研究をしていると思いきや、海とは切り離せない関係だと感じます。



――東京大学に在学し研究中とのことですが、なぜリブレット構造に興味をもったのですか。

 高校生の時に初めて飛行機に乗った時に飛行機が好きになり、調べていくうちに飛行機が空気抵抗を減らして飛ぶことができるリブレット構造を知りました。その時から「大学で絶対にこの研究をする!」と決めて進学しました。
 日本でリブレット構造の研究をしている学生は当時一人しかいなかったのですが、その方はJAXAの宇宙科学研究所に所属していました。来年卒業を控えていたため、今年会えなければもう一生話せないかもしれない、この機会を逃したら研究ができないかもしれないと思い、猛アタックしました。通常は大学院生からしかその研究所に入ることができないのですが、技術習得制度を使い、学部3年生で所属させてもらうことができました。まさか本当に実現するとは思っていなかったので、嬉しいというより驚きの方が大きかったです。大学卒業後は、そのままJAXAの研究室に所属させていただき、研究職を目指します。





――昨年の夏にはドローンの大会に参加したと伺いました。

 アメリカで開催された模擬人工衛星の世界大会で、ドローン部門に参加しました。ロケットでドローンを地上4kmまで打ち上げ、ドローンがパラシュートで降りてきたら、パラシュートの紐を切断して目標地点まで移動し、ゴール地点に降りるように設計しました。
 私が担当したのは、はんだごてなどを使い抵抗やコンデンサーといった端子をつなげることです。大会ではドローンの重量制限があるため、必要な機能を全て搭載した上で軽量化することが一番大変でした。何度やってもうまくいかずに夜中までメンバーと悩んだこともありましたが、完成した瞬間は、このために頑張って本当に良かったと思いました。



――大会で一番思い出に残っていることは何ですか。

 アメリカに行き実際にドローンを飛ばすことができたことです。ブラックロック砂漠という、東京都より広い面積の砂漠でドローンを飛ばしました。大会本番ではうまくいかなかったのですが、本番終了後に飛ばしたところ、通常2~3km飛べば良いとされるところを、5.6kmも飛ぶことができました。理論上は5.9km飛べる仕様でしたが、そもそも日本では法律上その距離を飛ばせる場所がなかったので、アメリカでそれを証明することができたのは、メンバー全員が興奮した出来事でした。


――ミス日本「海の日」として今後どのように活動されたいですか。

 まず一番は私が海を楽しむことだと思っています。先日ミス日本の仕事でSUP(Stand Up Paddleboard)やシーカヤックを体験しました。
 海はレジャーとしてのイメージが強いですが、一方で、日本の貿易量の99%以上は海運が担っているという重要な側面があります。ミス日本「海の日」として、いろいろな方に海に興味を持っていただき、海の楽しさに加えて、私たちが海から受けている恩恵を発信していきたいです。




――マリンネットでは環境問題に関する取り組みを行っていますが、環境問題について活動されたことはありますか。

 地元の吹上浜で、清掃ボランティアやウミガメ保護のボランティアに何度か参加しました。小学生の時にそのような経験ができ、環境問題を考える機会を得ることができました。


――欠かせない美容・健康法についてお聞かせください。

 散歩です。はんだごてを使ったりパソコンを触ったりしていると、気付いた時には何時間も経っていることがあります。体もバキバキに凝り固まって、頭もパンクしそうになることがあるので、そんな時はすぐに散歩に行きます。自然の音を聞きながらゆっくりと歩くのが好きで、頭がすっきりして、詰まっていたことがスムーズに進んだりします。


――休日はどのように過ごされていますか。

 研究です。現在一人暮らしで、家事ややるべきことに追われていますが、少しでも時間があればJAXAの研究所に足を運んでいます。


――思い出に残っている「一皿」についてお聞かせください。

 母の作るハンバーグです。上京してから、自分で料理をしてもお店に行ってもやはり母の味を再現することができません。実家に帰ってハンバーグを食べると「ああ、帰ってきたんだなぁ。」と実感します。父も、ジンジャーエールを手作りして受験勉強の時に差し入れてくれることがありましたので、家庭の味には思い出がたくさんあります。




――ご両親の応援も心強いですね!

 はい。ただミス日本の時は、私は既に上京していて両親と離れていました。コンテストでの受け答えの練習を誰かに手伝ってほしかったのですが、テスト期間中ということもあって友人に頼むこともできず、「パソコンに質問してもらおう」と思いました。エンターキーを押したら質問がどんどん出てくるプログラムを作って一人で練習していました。このようなことをしたのは私が初なのではないでしょうか。(笑)


――心に残る「絶景」はありますか。

 大学で所属しているサークルのワークショップで行った奄美大島の海です。



――どのようなサークル活動をされているのですか。

 都会と地方の教育格差の解消を目的としたサークルに入っています。
 例えば、奄美大島には大学がないことから、高校生は大学の情報を得ることができず、イメージさえ持つことができません。そこで私たちが現地に行き、プレゼンや個別相談会を行いました。高校生は大学進学に興味がないわけではなく、何から始めたらいいのか分からないという学生が多かったです。現地参加の私たち以外に、大学生が30名ほどオンライン参加しましたが、高校生の個別相談の時間になると、皆質問攻めにあっていました。
 ちなみに奄美の空港では、羽田空港とは飛行機の種類が異なっていてとても興味深かったです。




――やはり機体が気になるのですね!(笑) 在学中に挑戦してみたいことはありますか。

 大学在学中に世界一周をしたいと思っています。最近、世界一周した方のお話を聞く機会があり、私も挑戦したいと思いました。特にドイツには興味があります。ルフトハンザ空港がリブレット構造の研究をしていて文献や記事が多くあるので是非この目で見てみたいです。そのために大学の第二言語もドイツ語を選択しています。またお酒も大好きなので、現地のビールも飲みたいです!


――ありがとうございました。好きなことを追いかける情熱が眩しく見えました。今後のご活動を応援しております!

 
【プロフィール】
有馬 佳奈(ありま かな)
鹿児島県出身 東京大学工学部航空宇宙工学科3年
将来は、航空機技術の発展に貢献する研究職につきたい。


■ミス日本公式サイト(https://www.missnippon.jp/

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