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【まりたん 第15回】
2025ミス日本「海の日」
微生物の力で海と地球の課題解決を目指す
高橋 彩乃さんのインタビューです
< 第566回>2025年07月07日掲載 


2025ミス日本「海の日」
高橋 彩乃 氏















――ミス日本への応募のきっかけについて教えてください。

  応募のきっかけは、母からの勧めでした。その後、書類審査を通過し、東関東地区大会を経てファイナリストに選ばれる過程で、私の中のある思いが次第に強くなっていきました。
 特にファイナリストの勉強会では、さまざまな分野の講義を受ける中で、それまで知らなかった世界に数多く触れ、自分の考えを深める貴重な機会となりました。私は理系を専攻していますが、これまでの経験の中で、理系分野には女性が少ないと感じる場面が多くありました。勉強会を通じて改めてそうした現状に気づかされたことで、将来的にはこの状況を少しでも改善したいという思いが芽生え、次第にその思いが強くなっていきました。
 最初は母の勧めで始めた挑戦でしたが、勉強会で多くの学びと刺激を得たことで、「私はこうした思いを抱いてこのコンテストに臨んでいたのだ」と、改めて自覚することができました。



――勉強会で特に印象に残っていることや学びになったと感じたことはありますか。

 2つあります。1つ目は、荒川の下水道研修施設を見学させていただいたことです。私が現在、大学で研究対象としている微生物や菌は、下水道に多く存在しています。実際にその生息場所へ足を運び、自分の目で見ることができたのは、とても貴重な経験となりました。
 2つ目は、JAMSTEC(海洋研究開発機構)の女性研究者の方から直接お話を伺う機会をいただいたことです。海洋分野の研究者の中でも、女性の割合は依然として少ない現状がある中、実際にその道を切り拓いている方の経験や考えに触れられたことは、私にとって大きな刺激となり、深く印象に残っています。




――特に頑張ったことや、克服できたと感じることはありますか。

 私はもともと人前で話す機会が少なく、特に大勢の前で話すことには苦手意識がありました。ミス日本の勉強会では、毎回終了後に参加者の中から一人が感想を述べる機会があり、自ら手を挙げて質問する時間も設けられていました。初めのうちは、緊張から質問することが出来ませんでしたが、回を重ねるごとに少しずつ自分の意思で発言できるようになりました。
 さらに、勉強会で得た学びを自分の言葉で纏めるという課題もあり、これは予想以上に難しく、とても勉強になったと感じています。
 このような経験を通じて、発信力や思考を整理する力を養うことができ、自分自身にとって大きな成長につながったと思います。






――ミス日本「海の日」としてどのような活動をされていますか。

 千葉県の館山でサンセットクルーズに参加し、司会をさせていただいたほか、九州のボートショーでもお仕事をさせていただきました。今後も日本各地の様々な場所でミス日本「海の日」としての活動に取り組む予定です。
 このほかにも、全日本海員組合が発行する「海員」に、毎月コラムを書かせていただいています。ミス日本「海の日」としての活動報告や海に関連する話題、個人的に訪れた旅先での出来事などを書いています。ぜひご一読いただければ嬉しく思います。




――現在大学4年生とのことですが、ミス日本「海の日」としての活動と学業の両立はご苦労も多いのではないでしょうか。

 そうですね、大変だと感じることもあります。現在、卒業論文の研究に取り組んでいるのですが、私の研究対象である微生物は、数日間お世話をしないと死んでしまうこともあります。そのため、ミス日本「海の日」としてのお仕事を終えた後、白いスーツのまま大学に直行することもあります(笑)。


――卒業論文では、どのようなテーマで取り組まれているのでしょうか。

 硝化菌の保存と管理方法について研究しています。硝化菌とは、アンモニアを亜硝酸に酸化するアンモニア酸化菌と、亜硝酸を硝酸に酸化する亜硝酸酸化菌の総称で、主に土壌中に存在しています。これらの菌は、地球の窒素循環に深く関わっており、生態系のバランスの維持に不可欠です。私の研究では、硝化菌をどのような条件で効果的に保存・増殖させることができるか、その最適な培地組成や冷凍保存後の再活性化の方法を検討しています。


――理系分野に進学したきっかけをお聞かせください。

 子供の頃から恐竜が大好きで、図鑑をよく読んでいました。おそらく、恐竜好きの母の影響を受けたのだと思います。中学・高校時代には、それまで苦手意識のあった数学にも徐々に興味を持つようになり、その流れで生物や科学の分野をもっと深く学びたいと考えるようになりました。



――そこから現在取り組んでいる微生物学の研究へとつながっていくのですね。

 はい。もともとバイオ分野の研究に興味があり、大学は生命科学科に進学しました。生命科学の研究では、マウスなどのモデル生物を用いてデータを取得し、それを応用していくというアプローチが一般的です。
 一方、微生物学はそれとは異なるアプローチで研究を進めます。数多くのDNA情報の中から、存在するかどうかもわからない微生物を特定していくという、見えないものを見つけ出す研究です。これは、私が当初想像していた生命科学のイメージとは大きく異なり、大きな衝撃を受けました。しかし同時に、“未知のものを見つけ出す”という探求の魅力に強く惹かれ、微生物学を専攻しようと決意しました。



――微生物学の研究を通して、今後取り組みたい課題があれば教えてください。

 微生物の力を活用して環境を浄化する「バイオレメディエーション」と呼ばれる環境工学の取り組みに強い関心を持っています。実際、タンカーが座礁して重油が海に流出した際には、微生物を用いて海水を浄化する技術の導入が進められています。現在、微生物学を学んでいることに加え、海の環境問題の解決に貢献したいという思いもあります。そのため、将来はこうした取り組みに関わる仕事に携わりたいと考えています。


――長年書道に取り組まれているとのことですが、始められたのはいつ頃でしょうか。

 書道を始めたのは、小学校3年生の頃だったと思います。祖父が書道の師範ということもあり、夏休みに祖父の家を訪れた際は、書道専用の部屋でよく手ほどきを受けていました。
 本格的に始めたのは、中学生になってからです。小学生までは一般的な書体で書初めを書く程度でしたが、中学生の時は、中国の様々な書体に挑戦しました。書体には、篆書(てんしょ)、隷書(れいしょ)、草書(そうしょ)、行書(ぎょうしょ)、楷書(かいしょ)といった種類があり、それぞれを一つひとつ丁寧に学びました。現在は忙しく、以前のように書道に多くの時間を割くことができませんが、機会があれば作品展に出品しています。








――書道の経験がご自身の人生に影響を与えたと感じることはありますか。

 集中力がかなり高まったと思います。書道をしているときは、周囲の音が聞こえなくなるほど集中し、先生や友人から話しかけられても気づかないことがあります。子供の頃から培ってきたこの集中力は、現在の大学での研究活動にも大いに生かされていると感じます。


――ご趣味は読書、音楽、映画鑑賞と伺っております。お気に入りの作品や、特に印象に残っている作品があればご紹介ください。

 最近観た映画の中では、『ウィキッド』が特に印象に残っています。もともとミュージカルが好きで、『オズの魔法使い』はもちろん、『エリザベート』や『モーツァルト!』なども大好きな作品です。
 音楽は、英語の勉強も兼ねて洋楽をよく聴いています。中でも特に好きなのは、テイラー・スウィフトの『Cruel Summer』です。詩的で力強い歌詞の中に、どこか切なさも感じられるところがとても気に入っています。
 読書では、特に推理小説をよく読みます。綾辻行人さんの『十角館の殺人』をはじめとする「館」シリーズ全10作品が好きで、他にもさまざまな推理小説を集めています。シリーズものは“マニア”といわれるほど読み込みます。最近では、『名探偵コナン』の最新作を4DXで鑑賞しました。『名探偵コナン』は子どもの頃から親しんできた作品で、今でも新作が出るたびに楽しみに観ています。







――美容や健康面で、普段から意識して実践していることや、日常生活で心がけていることがあれば教えてください。

 実はあまり運動が得意ではないんです(笑)。そのため、愛犬との散歩を日課にして体を動かすようにしています。我が家の愛犬は、真っ白でふわふわのトイプードルです。歩くのも走るのも好きで、ボール遊びも大好きな、可愛い家族の一員です。一緒に散歩をしていると、自然と運動不足の解消にもなりますし、何より愛犬との時間がとても楽しいです。
 食事は無理をしない範囲で気を付けるようにしています。現在は卒論の研究でとても忙しい毎日ですが、そのような中でも、例えばおやつをポテトチップスではなく干し芋にするなど、できるだけ自然の素材を取り入れるようにしています。ちなみに、好きな食べ物はお肉です。時には3人前を食べられるほど、お肉には目がありません(笑)。



――心に残っている「絶景」があれば、ぜひその情景やエピソードについて教えてください。

 私は千葉県出身で、一番親しみがあるのは銚子の海です。小学生の頃、父がふと「日の出でも見に行くか」と言ったことをきっかけに、父と母、そして愛犬と一緒に朝日を見に行ったことがあります。
 太陽が昇る前、少しずつ空が明るくなり、やがて海の青色が広がっていく様子、そして、水平線から太陽が顔を出すその瞬間――淡いオレンジ色に染まった光景が、今でも目に焼き付いています。海の深い青色と太陽の優しいオレンジ色が織りなすコントラストはとても美しく、太陽の持つ力強さと温かさを感じました。
 また、両親がアウトドア好きなこともあり、友人の船に乗せてもらって釣りに出かけたり、愛犬と一緒に浜辺で遊んだりすることがよくありました。そのような思い出がたくさん詰まった千葉の海は、私にとって特別で、大切な思い出の場所です。




――最近訪れた場所で印象に残っている場所はありますか。

 最近、静岡県伊東市を訪れる機会があり、その旅も愛犬と一緒でした。伊東の海では、ペット同伴で乗船できる遊覧船があり、船底にはガラスが張られていて、海中の景色を間近に楽しむことができました。そこから見えた海の中はとても美しく、感動しました。また、船の周囲をトンビが旋回しており、驚くほど近くを飛ぶその姿は大変迫力がありました。あまりの近さに、愛犬が連れて行かれてしまうのでは・・と、少しひやひやしたほどです(笑)。



――思い出に残る一皿を教えてください。

 思い出の味といえば、やはり実家のカレーライスです。実家で食べるカレーは、友達の家やお店のカレーとはどこかが違う味がします。特別な材料でもなく、ルーにこだわっているわけでもありませんが、どんな具材であっても、不思議といつも同じ味になります。これこそ「家族の味」なのだと、食べるたびにしみじみと実感しています。










――最後に、ミス日本「海の日」に選ばれた今、このご経験を通じて、後進の女性たちへ伝えたいことはありますか。また、ミス日本「海の日」としての意気込みをお聞かせください。

 これまで苦手意識を抱いていたことも、ミス日本の選考過程や勉強会、さまざまな活動を通じて少しずつ取り組めるようになり、それに伴って自分自身への理解も深まったと感じます。このような貴重な学びの機会に恵まれることは、人生においてかけがえのない経験であり、心から感謝しています。だからこそ、これから何かに挑戦しようとする女性の皆さんには、思い切って一歩を踏み出して欲しいと伝えたいです。挑戦することでしか見えない景色があり、それまで気づけなかった自分の可能性に出会えるかもしれません。

 これからは、ミス日本「海の日」として、大学での学びを通じて得た知識を生かし、生物多様性の大切さや、島国である日本の環境を守る意義について、多くの方々にわかりやすく伝えていきたいと考えています。
 この1年間、ミス日本「海の日」として、一つひとつの活動に心を込めて取り組んでまいります。



――ありがとうございました。好きなことを追いかける情熱が眩しく見えました。今後のご活動を応援しております!

 
【プロフィール】
高橋 彩乃(たかはし あやの)
千葉県出身 中央大学理工学部4年
生命科学の研究に携わり、人々のくらしを支える仕事がしたい。


■ミス日本公式サイト(https://www.missnippon.jp/

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