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【まりたん 第16回】
2026ミス日本「海の日」
“まずは一歩踏み出してみる”多くの出会いと伝えたい未来
野口 絵子さんのインタビューです
< 第583回>2026年07月13日掲載 


2026ミス日本「海の日」
野口 絵子 氏
















――ミス日本への応募のきっかけについてお聞かせください。

 ミス日本事務局の方にお声がけいただいたことがきっかけでした。2025年度ミス日本の受賞者が決まった時期に、別の仕事を通じてご一緒する機会があり、その際に初めて、ミス日本がどのような活動をしているのか詳しくお話を伺いました。
 特に、ファイナリスト期間中に行われるさまざまな勉強会では、日本文化や伝統芸能、海洋研究、メイク、ダンスなど、幅広い分野について学ぶことができることを知り、自分自身の可能性を広げるためにも、「ぜひ挑戦してみたい」と思いました。
 ちょうどその頃、私は大学を1年間休学してヒマラヤ登山に挑戦していました。ヒマラヤの山を2つ登って帰国し、「次は3つ目の山としてミス日本に挑戦してみよう」と考え応募を決意しました。



――ファイナリストの勉強会で特に印象に残っていることはありますか。

 どの勉強会も大変学びの多いものでしたが、特に印象に残っているのは、関直美先生(能楽シテ方宝生流能楽師 重要無形文化財総合指定保持者)による「能」の授業です。実際に能面をつけて舞台を歩かせていただいたり、普段見ることのできない舞台裏を見学させていただいたりしました。能面は、一見すると一つの表情に見えますが、光の陰影によって、怒りや喜びなど様々な表情を見せます。また、歌舞伎が”足して魅せる“芸術だとすれば、能は“引いて魅せる”芸術だというお話も大変興味深く感じました。松が一本描かれているだけの舞台から、観る人が想像力を膨らませてその世界観を感じ取る――その日本独特の美意識に深く感銘を受けました。
 ほかにも、JAMSTEC(海洋研究開発機構)の研究者の方々のお話も印象に残っています。研究に対する熱意や愛情が本当に強く、目を輝かせながらお話される姿に心を動かされました。また、女性研究者や女性自衛官の方々のお話を伺う中で、女性が少ない分野でも、自ら道を切り拓いて活躍されている姿に勇気をいただき、自分自身もどこまでも挑戦していけるのだと感じました。



――勉強会を通じて、ご自身が成長できたと感じることはありますか。

 毎回、勉強会終了後には、課題として感想文を提出していました。同じ授業を受けても、ファイナリスト一人ひとりで感じ方や捉え方は全く異なるものでした。ほかのファイナリストが、自身の夢やこれまでの経験と結びつけながらまとめた感想文を読む中で、自分にはない視点に大変刺激を受けました。また、感想文としてアウトプットすることで学びを改めて整理することができ、理解もより深まったと感じています。


――ミス日本「海の日」として、現在どのような活動をされていますか。

 各地で開催されるボートショーや海に関わるイベントなどに参加させていただいています。イベントでは、実際に海や船に関わるお仕事をされている方々からお話を伺う機会が多くあり、船を造る方、海を守る活動をされている方、漁業に携わる方など、さまざまな立場の方が海を支えていることを知り、海の世界の奥深さを実感しています。
 小型船舶操縦士二級免許を取得してからは、どこの海で操船しようかと考えるのが楽しみの一つになっています。実際に自分で操船すると、世界が変わったような感覚になります。海には道も信号もないので、どこまでも行けそうな開放感に心が躍ります。
 これまでは“山”(登山)を中心に活動してきたので、海はまだまだ知らないことばかりの新しい世界でもあります。実際に海へ足を運ぶと、陸から見ているだけでは分からなかった広さや静けさ、自然の迫力を体感することができ、その魅力に引き込まれるようになりました。
 ミス日本「海の日」の活動には、広報としての役割もありますが、海の魅力や大切さをより多くの方に伝えるためには、言葉で発信するだけでは十分ではないと思っています。船舶免許も取得しましたが、実際に海へ出て経験を重ね、その経験を通じて感じたことを自分の言葉で伝えていくことが大切だと感じています。




――今後、ミス日本「海の日」として取り組みたいことはありますか。

 自分のこれまでの経験を活かしながら、海の環境保全につながる活動をしたいと考えています。私は幼い頃から、山に登るだけでなく、父と一緒に富士山の清掃活動に参加してきました。自然を楽しむことと、その環境を守ることは切り離せないものだと考えています。
 JAMSTECで海洋ゴミについて学んだ際は、深海にレジ袋などのゴミが沈んでいる映像を目にし、大きな衝撃を受けました。山のゴミは目に見えますが、海のゴミはなかなか目にすることができません。だからこそ、問題を身近に感じにくく、危機感を抱きにくい側面があります。
 最近では海岸清掃活動に参加する機会もあります。その中で感じるのは、海洋ゴミは私たちの日常生活から出たものが海に流れ着いたものだということです。物を買い過ぎないことや、適切に分別をすることなど、一人ひとりが身近なところからできることもあります。
 海の魅力を伝えるだけでなく、海を取り巻く環境問題についても自分自身が学び続け、その大切さをより多くの方に伝えていきたいです。



――能登半島地震の際には、支援活動にも取り組まれていたそうですね。

 能登半島地震の発生直後に避難所へ寝袋の支援を行いました。避難所生活では、先の見えない不安の中で、精神的にも肉体的にも疲労が蓄積していきます。少しでも安心して休息できる時間を過ごしていただきたいとの思いから、これまでの自分の登山経験を生かし、支援物資として寝袋を選択しました。
 また現地では、実際に足を運ばなければ分からない現実も数多くありました。現地で撮影した写真を東京の友人に見せると、「こんな状況なの?」と驚かれることも多く、報道だけでは現地の様子が十分に伝わっていないと感じました。支援に向かう車の混雑や不足する物資の状況など、日々事態は変化しており、必要とされる支援も場所によって異なりました。だからこそ、現場へ足を運び、自分の目で状況を確かめ、現地の方々の声に耳を傾けることの大切さを強く感じました。
 一方で、支援活動を通じて、人と人とのつながりや温かさを実感することもできました。大変な状況の中でも、地域の方々が互いに助け合いながら生活されている姿がとても印象に残っています。「将来、東京で震災が起きたら、今度はこちらが助けに行くからね」と声をかけていただいた時は、胸がいっぱいになりました。

 今年のゴールデンウィークには、地元のお祭りが震災後初めて復活したと伺い、当時支援活動の拠点となっていた七尾のテント村へ足を運びました。そこで、震災当時にお世話になった地元の方と2年ぶりに再会することができました。再会した方はお元気そうで、「自分の家はもうだめだと思っていたが、修理してくれる人が見つかった」「震災がなければ出会わなかった人たちとのつながりができた」など、震災後の心温まるお話をたくさん聞かせていただきました。もちろん震災は大変な出来事でしたが、人とのつながりや支え合いを前向きに受け止めていらっしゃる姿に、胸を打たれました。




――ご趣味の「生産者巡り」についてお聞かせください。

 大学2年生の頃から、日本の水産資源や食文化を守る活動(Chefs for the Blue)に携わっており、この活動を通して、漁師の方など生産者のお話を聞く機会が増えました。実際に漁船に乗せていただき、定置網漁を見学したり、その場で魚をいただいたりすると、「命をいただいている」ことへの感謝の気持ちがより深くなります。
 最近では、福井県・若狭の定置網漁にも参加しました。実際に現場へ行くことで、ニュースやデータだけでは見えない、生産者の方々の葛藤や現実を知ることができました。
 例えば、資源保護のためにクロマグロの漁獲制限は重要な取り組みですが、現場ではその運用に難しさも伴います。定置網に入ったクロマグロは、漁獲枠に応じて放流することもあります。しかし、クロマグロは泳ぎ続けることで呼吸をする魚のため、一度網に入ると弱ってしまい、放流後も生き延びることが難しいケースがあるようです。また、資源管理によって漁場のクロマグロが回復してきた一方、他の沿岸魚種は管理が不十分な状態が続いており、生態系のバランスへの影響も懸念されています。このように、私たちの食を支えている生産者の方々の思いを知ることで、自分自身の食に対する意識も大きく変わりました。
 今後もさまざまな地域へ足を運び、生産者の方々の声に耳を傾けながら学びを深めていきたいと思っています。そして、現場で感じたことを自分の言葉で発信していきたいです。



――美容や健康面で、普段から実践していることや、日常生活で心がけていることがあれば教えてください。

 日焼け対策です。山での紫外線は非常に強く、上からだけではなく雪や氷に反射して下からも当たるため、ひどい時には火傷のような状態になることもあります。
 幼い頃から登山家の父の姿を見て育ちましたが、下山後の父はサングラスの部分だけ白く残るほど日焼けをしていて、久しぶりに帰宅した父の顔を見て、子ども心に少し怖いと感じていました(笑)。
 私自身は日焼けをすると肌が痛くなってしまい、風が当たるだけでもストレスに感じるので、「これはしっかり対策しなければ」と思うようになりました。それ以来、登山の際は必ずフェイスパックを持参しています。ヒマラヤ登山の際も持っていきましたが、標高の高い場所は巨大な冷凍庫の中にいるような寒さで、パックもキンキンに冷えています。「3、2、1、よし!」と気合いを入れながら、山の上でも毎日欠かさずパックをしていました(笑)。
 しっかりと日焼け対策と保湿をすることで、下山後はむしろ肌の調子が良くなるくらいです。登山の際はほとんどメイクもしないので、それも関係しているのかもしれません。



――心に残っている「絶景」について教えてください。

 昨年(2025年)登頂したヒマラヤのメラピーク(標高6,476m)山頂から見た景色です。ちょうど1年前の今頃(取材時:2026年5月)、約1か月半かけて登りました。
 頂上へ辿り着くまでの道のりは非常に過酷でした。近年のヒマラヤでは気候変動の影響もあり、本来積雪の少ない時期に大雪が降ったり、天候が不安定になったりすることで、予定していたルートで登れないこともあります。メラピーク登山の際は、本来であればそのまま進めるはずだったルートが大雪の影響で通行できず、一度5,000m近くまで登った後、再び2,000m地点の登山口まで戻り、別ルートから登り直すことになりました。
 そのうえ、山頂アタック当日には体調を崩してしまい、かなり大変な状態でした。それでも朝8時頃に山頂へ辿り着くことができ、そこで目にした景色は言葉にできないほど美しいものでした。目の前にはヒマラヤの山々が360度広がり、エベレストをはじめ、7,000m級・8,000m級の山々を一望することができました。それまで感じていた疲労や苦しさも、全て吹き飛びました。
 山の景色は天候に大きく左右されます。以前登ったキリマンジャロでは、山頂付近がブリザードとなり、数メートル先さえ見えませんでした。だからこそ、メラピークの山頂で見た景色は、今でも忘れられない特別な景色です。
 そして不思議なことに、山頂に立つと「次はどの山へ行こう」と考え始めてしまうのです(笑)。




――思い出の一皿についてお聞かせください。

 モロヘイヤスープです。エジプトの家庭料理ですが、私の父方の母(祖母)がエジプト人で、母は祖母から作り方を教わり、今も作り続けてくれています。私にとっては、小さい頃から親しんできた大好きな家庭の味です。
 モロヘイヤを細かく刻んで鶏出汁のスープに入れて煮込み、コリアンダーやクミンなどのスパイスを加えて作ります。バターライスにかけて食べると大変美味しく、誕生日や特別な日に欠かせない料理です。下山後に真っ先に食べたくなるのもこのスープで、母が作るモロヘイヤスープを口にすると、「家に帰ってきたな」と感じます。
 高校時代はニュージーランドへ留学していたのですが、コロナの影響もあって、約3年間日本へ帰ることができませんでした。その時も、帰国して最初に食べたのが、このモロヘイヤスープです。


 また留学中は、日本食が恋しくて、週末になると自分で献立を考えて日本食を作って食べる時間が何よりの楽しみでした。
 子供の頃から食べることが大好きで、その関心が次第に作り手や生産現場にも向かうようになりました。生産者巡りだけでなく、大学では地域の方々と一緒に米作りにも取り組んでおり、自分の手で育てたり収穫したりすることにも興味を持つようになりました。最近は能登でたけのこ掘りもしてきましたが、自分で採ったものを自分で料理して食べると、美味しさも格別です。




――絵子さんにとって「自分らしさ」とは。

 「挑戦し続けること」です。
 小さい頃から山に登ってきましたが、実は最初から山が好きだったわけではありません。父が一年の半分ほど登山で家を空ける生活をしており、たまに帰ってくると「山に行こう」と誘われるので、父と一緒にいたい一心で、「嫌だけど頑張るしかない」と思いながら挑戦していました。苦手なピーマンを頑張って食べる感覚に近いかもしれません(笑)。
 また、当時は引っ込み思案な性格で、自分に自信がありませんでした。山での小さな挑戦を積み重ねる中で、「前より長く歩けるようになった」「前はできなかったことができるようになった」と感じる瞬間が増え、それが少しずつ自信につながっていきました。
 そうした経験を重ねる中で、自分自身の強みや自分らしさが見えてきたように思います。もし登山に挑戦していなかったら、今の自分はなかったかもしれません。
 今では山に登る時間は、自分自身と向き合う大切な時間です。「もっと頑張ろう」と気持ちを奮い立たせたり、これから挑戦したいことに思いを巡らせたりする時間にもなっています。
 ミス日本への応募も、そうした経験があったからこそ踏み出せた挑戦でした。もちろん、挑戦をした結果、後悔したり失敗したりすることもあるかもしれません。それでも振り返ってみると、その経験は全て自分の人生の一部になり、「挑戦してよかった」と思える日が来ると信じています。




――最後に、ミス日本「海の日」に選ばれた今、このご経験を通じて伝えたいことはありますか。

 最初の一歩を軽やかに踏み出してほしいということです。
 海の魅力は言葉でも伝えられますが、実際にその場所へ行ってみると、印象は大きく変わると思います。私自身、高校時代にニュージーランドへ留学した際、ホストファミリーに海へ連れて行ってもらったことがきっかけで、「海ってこんなに綺麗なんだ」「こんな世界があるんだ」と感じ、海が好きになりました。
 海へ行くために特別な知識や準備は必要ありません。最初の一歩は軽やかに、ボートショーなどのイベントに足を運ぶだけでも、新しい発見や出会いがたくさんあります。
 私自身も登山や船舶免許の取得、そしてミス日本への応募など、さまざまなことに挑戦してきました。最初は不安もありましたが、振り返ると、その一歩が新しい世界につながっていました。
 海に興味がある方も、まだあまり馴染みがない方も、ぜひ気軽な気持ちで海へ足を運んでみてください。そこから新しい出会いがあるかもしれません!




――ありがとうございました。何事にも前向きに挑戦し続ける姿がとても印象的でした。今後のご活動を応援しております!

 
【プロフィール】
野口 絵子(のぐち えこ)
東京都出身 慶応義塾大学総合政策学部
自然を五感で感じ学べる環境学校を子供たちに作る。


■ミス日本公式サイト(https://www.missnippon.jp/

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