コーヒーブレイク:CII規制への対応状況・今後の課題
著者:近藤 慶 マックス法律事務所 2023年5月12日

コーヒーブレイク:CII規制への対応状況・今後の課題

2023年1月1日にCII制度が開始してから4か月が経ちました。今回CII規制の現状、今後の課題について少しお話ししたいと思います。
なお、第15回の「BIMCO CII条項」でCII規制の概要及びBIMCOのCII条項の解説をさせていただいておりますので、そちらも併せてご確認ください。

⇒ 第15回「BIMCO CII条項」

CII規制への対応状況・今後の課題

CII規制の原状ですが、依然として周りの様子見をしている状態で、傭船契約への手当の対応が完了していない船主の方々も少なくないように思われます。
それというのも、まず、CIIのレーティングがもたらす影響がまだ不透明な点にあると思います。勿論、E評価や3年連続でD評価をとった場合に、改善計画を作成する必要はありますが、 罰金などのペナルティはありません。レーティングで高評価をとった場合のインセンティブや、レーティングのマーケットへの影響などについても議論されておりますが、まだ確定的なことは不明です。 このような状況が二の足を踏む一因となっているように感じます。
しかしながら、後にCIIのレーティングの影響が明確化、重大化してから慌てて傭船契約を修正するのは難しくなる可能性もありますので、 早い段階で傭船契約のCII規制への対応を進めた方がいいのは間違いないかと思います。

また、船主と傭船者双方が納得するようなCII対応条項を作成することが難しいことも現状の課題といえそうです。2022年11月にBIMCOがCII条項を作成しましたが、 BIMCOのCII条項については現状傭船者サイドの反感の声は大きいと聞いております。CII規制は影響を受けるのが船主であるのに、CIIのレーティングを大きく左右するのは傭船者の傭船計画であり、 その歪な関係が船主と傭船者間の調整を難しくしているように感じます。船主としては、BIMCOのCII条項を採用するのが理想的ではありますが、それが叶わない場合も、 傭船者の傭船指示のままだとCIIのレーティングが低評価となってしまう場合には、傭船指示を変更するように要請できるような条項は入れることが望ましいでしょう。
なお、傭船者サイドの反感の声もあり、BIMCOでも現在のCII条項の見直しも検討しています。
また、現在のCII条項は長期傭船を前提としており、短期の定期傭船や航海傭船については、利用できません。これらの傭船契約に対するCII対応条項についてもBIMCOで現在検討中です。

制度開始後もなお不透明な部分は多くありますが、いざというときに困らないよう、早期対応を進めつつ、制度の動向も注視して臨機応変な対応が今後も必要になってくるでしょう。

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